なにわの伝統野菜、サトイモ

「イモ」という言葉からすぐに思いつくのはどんなイモでしょうか。サツマイモ、ジャガイモを連想された方が多いのではないかと思います。

しかし、歴史的に日本で食べられてきたイモはサトイモなのです。

サトイモの旬は9月から10月。お米が凶作であった場合には、非常食となり、生きるために重要な食料と考えられていたのではないかと想像されます。

そのため、「ハレ」の日の食事に用いられるようになりました。

お月見の際にはサトイモを供え物にします。

お月見は別名芋名月とも呼ばれ、中国ではもともとお月見はサトイモの収穫祭であったいう説もあり、それが日本に伝播したようです。

お正月には、おせち料理としてサトイモの煮物を食べ、雑煮の具にもサトイモを使う地域が多々あります。

また、サトイモは、親イモに子イモをたくさんつけるので子孫繁栄を意味するので、お目出度い野菜の代表格となっています。

サトイモの主成分はサツマイモやジャガイモと同じデンプンですが、水分がやや多いため、いも類のなかでは低カロリーであり、たんぱく質やビタミンB1、カリウムも含んでいます。
また、独特の「ぬめり」があり、これは消化促進や免疫力向上作用を持つ成分によるものです。

このぬめりがあるので、サトイモ特有のねっとりした食感が生まれます。

サトイモを料理するときは、手に塩をつけて皮をむくとかゆみが弱まります。
ぬめりが苦手という方は、塩を入れた湯で下ゆでするといいでしょう。

淡白な味わいなので、煮物以外にも、素揚げにしたり、コロッケの具材にしたり、様々な用途があります。ウニとも相性がいいので、蒸したサトイモに練りウニをつけて一度お試しください。

大人向けの味です。

現在、よく食べられているサトイモは「石川早生」という種類で、その名前の由来は大阪府南河内郡石川村(現在の河南町)であるといわれています。

そのことから、サトイモはなにわの伝統野菜であるともいわれます。

しかし、サトイモは実は非常に種類の多いイモであり、また、日本だけで作られているわけではありません。

高温多湿を好むサトイモは、東南アジアや太平洋諸島でも作られており、その種類は多種多様です。

子どもが抱えるのも苦労するような巨大なサトイモもあります。

引用元/
なかよしくっく保育園食育コラムNo.5 2008年8月号
著者/伊藤知子
大阪国際大学人間科学部人間健康科学科准教授

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